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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 頁

青空文庫

に感じたくらいであり、勿論今度東京で経験したのとは、比べられるようなものではなかった。実を云うと、あの時の記憶があったので、あの程度の風でも五重塔が倒れたのだから、とてもこの風ではこの家が保つまいと云う気がして、恐怖が倍加されたのであった。尚又、風の勢も強かったには違いないが、たまたま泊っていた渋谷の家が安普請であったことが、その勢を五倍にも十倍にも感じさせたのであった。

風が吹き出したのは、まだ子供たちが寝床に這入る前であったから、宵の八九時頃でもあろうか。そして非常な物凄さになったのは、十時頃からであったろうか。幸子は悦子と雪子の三人で、二階の八畳に寝ることになっていたので、その晩も、初めのうちは三人で二階にいたが、あまりひどく家が揺れるので、悦子がひしと彼女にしがみ着き、姉ちゃん此方へいらっしゃいと云って、雪子をも母の寝床の方へ引っ張り寄せて、自分は間へ挟まりながら両手で二人の首っ玉へかじり着くようにしていた。幸子も雪子も、「恐い」と悦子が悲鳴を挙げる度に、恐いことはあれへん、直き止むよって安心しなさいと、最初はそう云っていたのであったが、だんだん悦子がしがみ着くのと同じ力で自分達の方からもしがみ着き、三人がぴったり顔を寄せ着けて、一つのかたまりになって抱き合っていた。