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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 頁
彼女は自分の体が壁に挟撃されそうな気がし、輝雄を突き落さんばかりに転げ落ちながら駈け降りた。二階にいた時は、風の呻りと、木の葉や、枝や、ブリキや、看板のようなものや、いろいろの物が空中を飛んで行く音に掻き消されて聞えなかったが、降りて来て見ると、恐いよう、恐いよう、と云う声が階下に満ちていた。秀雄から下の四人の子供達は、義兄夫婦の寝間になっている六畳の間に集って、両親の周囲にかたまっていたが、幸子たちがそこへ来て坐ると、叔母ちゃん、と云って芳雄と正雄とが幸子の両肩に取り縋ったので、悦子は仕方なく雪子に抱き着いた。姉は梅子を両手で覆うように抱きながら袂を秀雄に取られていた。(秀雄の恐がり方は奇妙で、風が止んでいる間は母の袂をシッカリと捩れるように捉えながら耳を澄ましてい、やがて遠くからごうと云う呻りが聞えて来ると、慌てて袂を放し、「恐いようッ」―――と、非常に低い、力の籠った掠れ声で云って、両手で耳の孔を塞ぎ、眼を潰って、顔を畳へ打つ俯しにするのであった)そう云う風に、四人の大人と七人の少年少女とがそこに蹲踞まっていた恰好は、恐怖の群像のように見えたでもあろうが、義兄の辰雄は別として、鶴子と、幸子と、雪子の三人は、こうして皆一緒に潰されるなら仕方がないと、言わず語らず覚悟していた。