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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 頁
「兄上も昼間は御不在、そして姉上も、悦子さんも、お春どん迄も上京中と云うような場合、どう云うことが起るであろうかと憂慮に堪えません」と云う語は、何よりも彼女を顛倒させた。全く自分は何と云う迂濶なことをしたものであろう。留守を妙子一人に預けて、雪子や悦子を連れ、お春までも連れて東京へ出ることを思い付いたのは、誰でもない、自分ではないか。自分はまるで二人のために恋愛の温床を作ってやったようなものだ。こう云う機会に恵まれれば、萌芽のなかった所にだって萌芽が発生せずにはいない。これで間違いが起ったとしても、責められるのは二人でなくて自分ではないか。何としても、これは片時も捨て置けない。こうしている間も気懸りである。………彼女は堪え難い焦躁を感じた。悦子を伴って帰る迄にまだ一両日を要するとすれば、その間を如何にして防止したらよいか。手っとり早い方法は、今直ぐ夫に電話を懸けて、兎も角も自分が留守の間は、妙子が板倉に会うことを禁じて貰うことである。だが、それは矢張面白くない。何とかして夫に知らせずに済ましたい。已むを得なければ雪子にだけ打ち明けて、今夜の夜行ででも立って貰い、それとなく監督をして貰うと云う方策もあるが、―――夫に知られるよりはまだその方が気が楽であるが、それも避け得られるものならば避けたい。