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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 頁
「ちょっとお春どん、風呂場の彼処締めなさい」
と命じたが、お春がそこを締めに行くと、
「いかんいかん、締めたらいかん」
と、妙子が湯槽の中から怒鳴った。
「おや、此処は開けとくのでございますか」
「そうやねん。うち、ラジオ聴くのんでわざと開けとくねん」
そう云われてみると、ちょうど今、応接間のラジオが新響の演奏を放送中なのであったが、彼女は応接間から風呂場までにある戸障子を皆少しずつ開けて置いて、湯に漬かりながらそれを聴いているのであった。それから、あれは今年の八月であったか、或る日小槌屋呉服店の若主人が誂え物を持って来たので、食堂で午後のお茶を始めていた幸子は、暫く妙子を応接間へ出して相手をさせながら、二人がしゃべるのを此方の部屋で聞いていたことがあったが、
「娘ちゃんは肥えてはりますさかい、単衣のべべをお召しになると、お臀を切られまっせ」
と、小槌屋が云うと、
「切られへんけど、大勢あとに尾いて来るわ」
と、妙子が云っている。小槌屋は、
「そうでおまっしゃろなあ」
と云って、えへらえへら笑っていたが、幸子は聞いていて厭な気がした。彼女は妙子の言葉づかいがだんだん品が悪くなるのに疾うから心づいてはいたが、まさかこんな口のききようをするとは思っていなかった。