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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 頁
―――芸者が京紅着けたら、唇を唾液で濡らさんようにいつも気イ付けてるねんて。物食べる時かて、唇に触らんように箸で口の真ん中へ持って行かんならんよってに、舞妓の時分から高野豆腐で食べ方の稽古するねん。何でか云うたら、高野豆腐は一番汁気を吸うよってに、あれで稽古して、口紅落さんようになったらええねん」
「ふうん、えらいこと知ってはりまんなあ」
「板倉君は、今日は見物に来たのかね」
と、貞之助が聞いた。
「なかなか。―――見物もさして貰いますけど、写真撮らして貰いに来てまんねん」
「今日の写真も絵端書にするのんか」
「絵端書にはせえしません。―――こいさんが日本髪に結やはって、舞舞やはる姿なんかめったに見られしませんよってに、記念のために写さして貰おう思うて」
「今日のは板倉さんのサーヴィスでんねん」
と、妙子が云った。
板倉と云うのは、阪神国道の田中の停留所を少し北へ這入った所に「板倉写場」と云う看板を掲げて、芸術写真を標榜した小さなスタディオを経営している写真館の主人であった。もとこの男は奥畑商店の丁稚をしていたことがあって、中学校も出ていないのであるが、その後亜米利加へ渡ってロスアンジェルスで五六年間写真術を学んで来たと云うのだけれども、実はハリウドで映画の撮影技師になろうとして機会を掴み得なかったのだと云う噂もある。