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るこうしんそう

縷紅新草

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《縷紅新草(るこうしんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,566 字 · 48 頁

青空文庫

指で挟んだ唐辛子でも構わない。――」

と、たそがれの立籠めて一際漆のような板敷を、お米の白い足袋の伝う時、唆かして口説いた。北辰妙見菩薩を拝んで、客殿へ退く間であったが。

水をたっぷりと注して、ちょっと口で吸って、莟の唇をぽッつり黒く、八枚の羽を薄墨で、しかし丹念にあしらった。瀬戸の水入が渋のついた鯉だったのは、誂えたようである。

「出来た、見事々々。お米坊、机にそうやった処は、赤絵の紫式部だね。」

「知らない、おっかさんにいいつけて叱らせてあげるから。」

「失礼。」

と、茶碗が、また、赤絵だったので、思わず失言を詫びつつ、準藤原女史に介添してお掛け申す……羽織を取入れたが、窓あかりに、

「これは、大分うらに青苔がついた。悪いなあ。たたんで持つか。」

と、持ったのに、それにお米が手を添えて、

「着ますわ。」

「きられるかい、墓のを、そのまま。」

「おかわいそうな方のですもの、これ、荵摺ですよ。」

その優しさに、思わず胸がときめいて。

「肩をこっちへ。」

「まあ、おじさん。」

「おっかさんの名代だ、娘に着せるのに仔細ない。」

「はい、……どうぞ。」

くるりと向きかわると、思いがけず、辻町の胸にヒヤリと髪をつけたのである。