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おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
線上閱讀森 於菟《耄碌寸前(おうがいのけんこうとし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 頁
父が自作をまず祖母に読んできかせるのはこれに限らぬが、この時は久しぶりの創作、しかも珍らしく戯曲なので勢いこんで朗読し、所々では何かポーズを作るようにさえ見えた。また「一幕物で登場人物を一人殺すのは外国の劇にも余り無いのだ」などといった。
さてここで父の最初の妻すなわち私の実母の病歴をみよう。登志子の父赤松則良は幕臣で西周、津田真道と共に西欧に派遣された赤松大三郎である。その妻貞子は林洞海の女、佐藤尚中や松本順の姪に当り順天堂はその一族で、また、その姉は子爵榎本武揚の室である。著しい多産系で、この赤松男爵には六男十女あり、皆同一夫人の出である。そのうち幼時死んだのは一男二女、二十歳未満で一女、他の五男七女はいずれも結婚し子孫を得るに至った。登志子は長女で全体としては男女を通じ二番目である。明治二十二年西周の媒酌で私の父に嫁し、前記の通り上野花園町に住んだ。その遺跡は現在水月旅館の構内で、家の跡には昔の建物を取り毀しその木材の一部を使用したという平家が建っており、鴎外荘と名づけている。
さて父に去られた登志子は赤松家に帰り、その後海軍で司法官の職にあった法学士宮下道三郎に再嫁、一男一女を挙げたが、男児は夭折、自分も健康次第に衰え病を養うために里方に帰り明治三十三年一月二十八日に歿した。