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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁
その二
挿絵
その二
右写本の文体はかの小瀬甫庵が太閤記や信長記の如きものと同断であり、叙述の方法もその頃の軍記類と大差はないが、たゞ此の本の特異な点は、今も云う通り盲人の話が本筋になっているのだけれども、而もわれ/\は、絶えず老尼の口を通して、或は老尼が身の上話の一部として、それを聞かされるのである。即ち此の聞書の筆者安積源太夫は、四十年前に嵯峨の草庵を訪ねた折の記憶を呼び起し、まのあたり膝を交えつゝ尼の語るのを聞いている気持を、いかなる場合にも忘れていない。されば物語の中から又一箇の物語が派生し、その派生したものゝ方が大部分を占めていながら、そうしてそれが、時には直接法として、時には間接法として語られながら、結局その説話は、盲人から尼、尼から筆者と云う順序を経た又聞きの又聞きたるを免れず、その上筆者が尼に聞いたのが四十年前、尼が盲人に聞いたのが更に四五十年も前であるから、時間的にも可なりの隔たりを想像されるのであって、尼も筆者も、それ/″\に印象がうすれていたであろうし、記憶のあやまりもないとは云えないが、そうして又、慥かに書き方にたど/\しい節も見えるのであるが、そう云ういろ/\の不確実性を含むに拘らず、今日それを読んでも何かしら惻々として胸を打つものがあり、物語の進展に連れて沈痛な盲人の言語風貌が髣髴として