輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《聴雨・蛍 織田作之助短篇集(おに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,483 字 · 41 頁
「さア、ないと思いますがね」
と新吉が言っているところへ、大阪行きの電車がはいって来た。
「――ここで待っておられても、恐らく無駄でしょうから……」
この電車で帰ってはどうかと、新吉はすすめたが、女は心が決らぬらしくもじもじしていた。
結局乗ったのは、新吉だけだった。動き出した電車の窓から見ると女は新吉が腰を掛けていた場所に坐って、きょとんとした眼を前方へ向けていた。夜が次第に更けて来るというのに、会える当てもなさそうな夫をそうやっていつまでも待っている積りだろうか。諦めて帰る気にもなれないのは、よほど会わねばならぬ用事があるのだろうか。それとも、来いと言う夫の命令に素直に従っているのだろうか。
電車の中では新吉の向い側に乗っていた二人の男が大声で話していた。
「旧券の時に、市電の回数券を一万冊買うた奴がいるらしい」
「へえ、巧いことを考えよったなア。一冊五円だから、五万円か。今、ちびちび売って行けば、結局五万円の新券がはいるわけだな」
「五十銭やすく売れば羽根が生えて売れるよ。四円五十銭としても、四万五千円だからな」
「市電の回数券とは巧いこと考えよったな。