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しょっこうとびしょう

職工と微笑

松永 延造

線上閱讀松永 延造《職工と微笑(しょっこうとびしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,696 字 · 144 頁

青空文庫

が私の心の中で醗酵している。「彼? 何?」それを簡単に之から話そう。

私は一時自分が犬殺しをしていた事を全然忘却していた。其れを悲しく想起せしめたのは支那人の鮑吉である、そして、彼は私が犬殺し屋であったのを知ると、大変に悲嘆して私から段々遠退いた。其れは極めて自然の成り行きである。何故なら、彼は恐ろしい人間嫌いで、その代りに、動物植物の異常な偏愛者であったのである。然し、鉱物は彼の注意を少しも惹くことが出来なかった。奇妙である。

彼は竹が一番好きである。「竹と竹、コチコチ当る音、宜敷い。」と彼は好く云うのである。「竹の挨拶」と彼は其れを呼ぶ。

「世界で一番美しいものは何か。」と私が尋ねた時にも、彼は躊躇なしに答えた。

「雲雀! 雲雀、天の息を飲む。」

彼は自ら飼っている雲雀を朝早く空へ放ち、其れが帰って来て、彼の手の甲へ乗る時、嘴の先に附いている「天の気」――それは何かしら分子の様なもの――を自分の鼻孔へ吸い込むのである。何たる厭な形式であろう、然も此の形式を彼は仙人風に尊重し、何か魂の薬になる事だとさえ信じているのであった。

彼は又、日本趣味を多分に持っていて、色の殆どない様な朝顔、昼顔、芍薬、実につまらない断腸花、合歓、日々艸なぞを大層崇め奉って、その花や葉っぱを甞めて渋い顔をしたりする。