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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
二人とも、二人一緒にいることは、決して本意ではなかったのだ。二人とも、同じように家を棄てて出て、一人っきりになることを渇望していた。だが僕は、女房とまだ縁が切れずにいる上に、神近や伊藤との関係があった。伊藤は、家とともにその亭主とも縁は切れているが、新たに僕との関係があった。そして、こうした厄介な関係の上からのみでも、二人は一緒にいるうるさい生活に堪えられなかったのだ。
伊藤は最初からそのつもりで、家を出るとすぐ、赤ん坊を抱えて下総の御宿へ行った。そこは、かつて彼女の友人の平塚らいちょうが行っていて、彼女には話しなじみのところだったのだ。彼女は当分そこで、ほんとうの一人きりになって、勉強する覚悟だった。
僕は伊藤のこの覚悟さえ続いたら、すなわちいろんな事情がそれを続けることを許しさえしたら、僕等の三角関係というか四角関係というか、とにかくあの複雑な関係がもっと永続して、そしてあんなみじめな醜い結果には終らなかったろうと、今でもまだ思っている。が、その覚悟を毀したのは何よりもまず経済問題だった。そして、どんなことがどこへどう祟って行くか分らない一例証として、ちょいとその話をして見よう。