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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
僕はすぐその家を辞した。
茂丸君は無条件では僕に一文も金をくれなかった。が、その話の間に時々出た「後藤が」「後藤が」という言葉が、僕にある一案を暗示してくれた。ある晩僕は内務大臣官邸に電話して、後藤がいるかいないかを聞き合わした。後藤はいた。が、今晩は地方長官どもを招待して御馳走をしているので、何か用があるなら明日にしてくれとのことだった。
「なあに、いさえすればいいのだ。」
僕はそう思いながらすぐ永田町へ出かけた。
「御覧の通り、今晩はこんな宴会中ですから……」
たぶん菊池とかいう秘書官らしい男が僕の名刺を持って挨拶に出て来た。
「いや、それは知って来ているんです。とにかく後藤にその名刺を取り次いで、ほんのちょっとの時間でいいから会いたい、と言って貰えばいいんです。」
秘書官は引っこんで行った。そしてすぐにまた出て来て、「どうぞ、こちらへ」と案内した。
宴会は下のようだったが、僕は二階のとっつきのごく小さな室へ案内された。テーブルが一つに椅子が三つばかり置いてあるだけで、飾りというほどの飾りもない室だった。
すぐに給仕がお茶を持って来た。が、その給仕はお茶をテーブルの上に置くと、ドアの右手と正面とにある三つばかりの窓を、一々開けては鎧戸をおろしてまた閉めて行った。