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しぜんびょうしゃにおけるしゃかいせいについて
自然描写における社会性について
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《自然描写における社会性について(しぜんびょうしゃにおけるしゃかいせいについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,820 字 · 12 頁
ところで、現実について観察を進めてゆくと、自然と人間との交錯の関係は、以上にのべただけの単純な地理的な相互的影響に止まらず、更に人間の側から猛烈な積極性が働きかけられることが見られる。人間は自然の一部として地球の上に棲息しているのではあるが、その生存意欲によって、人間の生活の進歩と豊富化のためには、山を河に変え、水を火に換えている。人間社会と自然とは、人間による自然力の最大な受用、制御、生産力への転換としての関係にある。そこで、人間社会の構成が生産手段の進歩、複雑化するにつれて、同じ人間であっても、直接、体でもって自然と組打ち、泥にまびれ、水にぬれ、坑にもぐって働かねばならない者と、それらの労働の結果に生れた利益だけを物質的に、精神的に利用して、自身の手は傷めず生活する者とがあらわれて来る。
自然に対する感情の社会性、階級性というものの文学以前の分岐点は、ここに根を置いているのである。
今日は雨が降っている。窓によって外を眺めると、田圃の稲の青々と繁ったところに、蓑笠つけて一人の農夫が濡れながら鍬をかついで歩いてゆく。その姿を一幅の風景画と見たてて、ああ、いい景色だとだけ眺め得る人もあるであろう。