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しばいきょうぼうけん

芝居狂冒険

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《芝居狂冒険(しばいきょうぼうけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,334 字 · 21 頁

青空文庫

勝手にしやがれだ。ケッ……」

親方はそのまま、勝手口から下駄を突っかけてプイッと出て行ってしまった。あとを見送ったお神さんがプーッと膨れ返った。

「あんな事を云って出て行ったよ。又、一軒隣へヘボ将棋で取られに行ったんだよ。妾(わたし)がアンマリ止めるもんだから、出て行くキッカケがなかったんだよ。呆れっちまうよホントに……将棋なんて何が面白いんだろうね。取られてばかりいて……芝居ならまだしもだけど……ねえ。万ちゃん……」

万平はお膳の上にポロポロ涙を落しながら点頭(うなず)いた。そのままガツガツと茶漬飯を掻込んだ。

「ヨー色男」

飯を喰った万平が、表二階の若衆部屋へ上って行くと、皆どこかへ遊びに行ってガランとした部屋の隅に、早くも床を取って寝ていた朋輩の粂吉(くめきち)が、頭を持ち上げてソウ云った。最前からの経緯(いきさつ)を聞いていたらしい。小声で云った。

「お神さん惚れてるぜお前に……」

万平は返事をしなかった。そのまま自分も蒲団を敷いてモグリ込んだ。

……手前(てめえ)等に俺の気持が、わかるか……。

といったような気持で、夜の更けるのを待った。

万平は実際、真剣であった。