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ばしょうについて
芭蕉について
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《芭蕉について(ばしょうについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,634 字 · 14 頁
この雑誌には吉田絃二郎氏の氏らしい「奥の細道」註解が連載されていた。ここにあげた中の幾つかの句は「奥の細道」におさめられているものだが、芭蕉という芸術家が、日本の美感の一人の選手だから、教養の問題として、それがわからないというのはみっともない、そういう気持にかかずらうことはちっともいらないと思う。私たちの今日に生きている感覚に訴えるものをもっていなくて、しかし文学古典の表の中では意味をもっているという作品は実にどっさりある。その場合は、現代の心に響くものはないということに、歴史のすすみの歓びがあるのであって、古典にとっても現代にとっても些も不名誉なことではないと思う。でも、芭蕉の芸術はどうだろう。私は俳諧のことは何にも知らない。全くの門外漢なのだけれども、折々読んだ句集の中から与えられて来ている感銘が多く深いところをみれば、彼の芸術には今の瞬間に息づいている何ものかがあるにちがいない。ここにぬきがきした僅の句は、私たちに理解されるというばかりでなく真実の共感があるものばかりである。芭蕉の芸術の特質である「さび」は同時に日本人の人生態度の底を流れるものであるから、芭蕉の分らない日本人というものはあり得ない。