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くのうのねんかん
苦悩の年鑑
線上閱讀太宰 治《苦悩の年鑑(くのうのねんかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,798 字 · 16 頁
そして、夏は下男たちの庭の草刈に手つだいしたり、冬は屋根の雪おろしに手を貸したりなどしながら、下男たちにデモクラシイの思想を教えた。そうして、下男たちは私の手助けを余りよろこばなかったのをやがて知った。私の刈った草などは後からまた彼等が刈り直さなければいけなかったらしいのである。」
これも同時代、大正七、八年の頃の事である。
してみると、いまから三十年ちかく前に、日本の本州の北端の寒村の一童児にまで浸潤していた思想と、いまのこの昭和二十一年の新聞雑誌に於いて称えられている「新思想」と、あまり違っていないのではないかと思われる。一種のあほらしい感じ、とはこれを言うのである。
その大正七、八年の社会状勢はどうであったか、そうしてその後のデモクラシイの思潮は日本に於いてどうなったか、それはいずれ然るべき文献を調べたらわかるであろうが、しかし、いまそれを報告するのは、私のこの手記の目的ではない。私は市井の作家である。私の物語るところのものは、いつも私という小さな個人の歴史の範囲内にとどまる。之をもどかしがり、或いは怠惰と罵り、或いは卑俗と嘲笑するひともあるかも知れないが、しかし、後世に於いて、私たちのこの時代の思潮を探るに当り、所謂「歴史家」