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もきちのいちめん

茂吉の一面

宇野 浩二

線上閱讀宇野 浩二《茂吉の一面(もきちのいちめん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,671 字 · 10 頁

青空文庫

日本では故岸田劉生が一時これらの画家に心を傾倒して模倣した絵が残つてゐる。

これは、昭和十三年の三月号の「アララギ」の表紙に出た、ヤン・ファン・アイクの描いた『ニコラス・アルベルガデイの肖像』について書いた、茂吉の解説の文章である。これを読めば、原画の写真を見なくても、私などの凡眼が見た以上に、はっきり分かるではないか、専門家でも書けないような、すぐれた「解説」ではないか。私が殊更に全文を引用したのは、いかに茂吉が美術の方にも卓越した観照眼を持っていたかを示したかったからである。(それから、昭和十一年は、この絵葉書の写真が「石見国府址伊甘の池」であるように、茂吉は、昭和九年の七月に、土屋文明と熊野路に遊んだ帰りに、石見の国に行って、『鴨山考』について調査し、その結論を得たので、後に一代の大作となった、『柿本人麿』の研究をはじめ、その年の十一月には、大著『柿本人麿』(総論篇)を刊行し、その翌年(昭和十年)には、人麿関係の調査のために、再び石見に行って、浜原、その他の町々を遍歴し、ほとんど丸一年の間、人麿の研究に憂き身をやつして、『鴨山考補註篇』を書くことに没頭し、その年(つまり、昭和十一年)は、箱根の強羅の山荘で、人麿の歌集の評釈を書きつづけた。