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くさまくら

草枕

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《草枕(くさまくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 頁

青空文庫

「あれが兄の家です。帰り路にちょっと寄って、行きましょう」

「用でもあるんですか」

「ええちっと頼まれものがあります」

「いっしょに行きましょう」

岨道の登り口へ出て、村へ下りずに、すぐ、右に折れて、また一丁ほどを登ると、門がある。門から玄関へかからずに、すぐ庭口へ廻る。女が無遠慮につかつか行くから、余も無遠慮につかつか行く。南向きの庭に、棕梠が三四本あって、土塀の下はすぐ蜜柑畠である。

女はすぐ、椽鼻へ腰をかけて、云う。

「いい景色だ。御覧なさい」

「なるほど、いいですな」

障子のうちは、静かに人の気合もせぬ。女は音のう景色もない。ただ腰をかけて、蜜柑畠を見下して平気でいる。余は不思議に思った。元来何の用があるのかしら。

しまいには話もないから、両方共無言のままで蜜柑畠を見下している。午に逼る太陽は、まともに暖かい光線を、山一面にあびせて、眼に余る蜜柑の葉は、葉裏まで、蒸し返されて耀やいている。やがて、裏の納屋の方で、鶏が大きな声を出して、こけこっこううと鳴く。

「おやもう。御午ですね。用事を忘れていた。――久一さん、久一さん」

女は及び腰になって、立て切った障子を、からりと開ける。