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あらほうし
荒法師
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《荒法師(あらほうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 頁
はその逃避である、これはどうしても俊恵には承服することができなかった、あらゆる生物がやがては死滅するだろう、いかなる代償を以てしてもそれだけは購うことはできないに相違ない、それはまさに動かすべからざる事実である、しかし同時にあらゆる生物が活きてあることも事実ではないか、生物はすべて死ぬまでは生きるのである、死が否定しがたいものであるなら、生もまた否定することはできない、死が必ず現前するものだとすれば寧ろ生きてあることを肯定し、そのまさしい意義を把握すべきが先だ、生死超脱は生きることの上に立たなくてはならぬ、俊恵はその一点に身心を叩きつける思いで修業した、そして今日までに得たものは空々たる「無」だった、かれの脳裡を去来する荒涼たる風景、ひたすら死の道をゆく絶望的な人間の姿、それがどうしようもない力でかれの観念をひきずりまわすのだ。……そのとき世間はどんな状態だったろうか、本能寺に亡びた信長のあとを受けて秀吉がめざましく擡頭してきた、戦えば破り攻むれば必ず降し、しだいに諸国をおのれの手に収めたうえ、天正十四年にはついに太政大臣に任ぜられて、天下はその威武の前に慴伏した。