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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《菊千代抄(きくちよしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 頁

青空文庫

八

侍の一人がこう説明した。そこは源太という農夫の物置小屋だったが、七月初旬に少し手入れをして、その男が住むようになった。源太の遠縁の者で、水戸のほうで商売をしているが、病弱のため店を人に頼み、暫く静養するつもりで来たのだという。

八

「私どももそうとばかり思っておりましたところ、それがみな嘘で、源太とは縁もゆかりもなく、水戸の店というのも、商人と申すのも嘘で、まことは武士らしく、そのうえ病気は労咳ということでございます」

源太の妻からもれたのが、屋形の下僕に伝わったので、来て問い詰めたところ返答がはっきりしない。素姓がそんなふうに怪しいし、労咳などという病人では屋形の近くには置けない。それで立退きを命じているのだということだった。

話を聞きながら、菊千代は男のようすを眺めていた。痩せた骨立ったからだで、いたいたしく肩が尖っている。両手を膝に置いて、ふかく頭を垂れた姿勢には、どこやら凛とした線があって、なにか由ありげな、という感じが強くきた。

――よほどやむを得ない事情があって、病むからだで、こんな処へ身を隠しているのだろう。菊千代はこう想像したので、「いや立退くには及ばない、許すから此処に置いて、病気をいたわってやるがよい、弱い人間に無慈悲なことはしないものだ」