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がもううじさと
蒲生氏郷
幸田 露伴
線上閱讀幸田 露伴《蒲生氏郷(がもううじさと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,772 字 · 128 頁
若し彼方に於てあらかじめ大力手利の打手を用意し、押取籠めて打ってかからんには誰か防ぎ得よう。主人若し打たれては残卒全からず、何十里の敵地、其処の川、何処の峡で待設けられては人種も尽きるであろう。こは是れ一期の大事到来と、千丈の絶壁に足を爪立て、万仞の深き淵に臨んだ思がしたろう。飛んでも無い返辞をして呉れたものだと、怨みもし呆れもし悲みもした事であろう。然し忠三郎氏郷は忠三郎氏郷だ。しおらしくも茶を習うたる田舎大名が、茶に招くというに我が行かぬ法は無い、往いて危いことは有るとも、招くに往かずば臆したに当る、機に臨みて身を扱おうに、何程の事が有ろうぞ、朝の茶とあるに手間暇はいらぬ、立寄って政宗が言語面色をも見て呉りょう、というのであったろう。政宗の方には何様いう企図が有ったか分らぬ。蒲生方では政宗が氏郷を茶讌に招いたのは、正に氏郷を数寄屋の中で討取ろう為であったと明記して居る。然しそれは実際然様だったかも知れぬが、何も政宗の方で手を出して居る事実が無いから、蒲生方で然様思ったという証拠にはなるが、政宗方で然様いう企を仕たという証拠にはならぬ。又万一然様いう企をしたとすれば、鶺鴒の印の眼球で申開きをするほどの政宗が、直接自分の臣下などに手を下させて、後に至って何様ともすることの出来ぬような不利の証拠を遺そうよう