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ぐびじんそう
虞美人草
線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁
おいと呼ばれた時、首を上げる。驚いたと云わんよりは、激したと云わんよりは、臆したと云わんよりは、様子ぶったと云わんよりはむしろ遥かに簡単な上げ方である。したがって哲学的である。
「君か」と云う。
宗近君はつかつかと洋卓の角まで進んで来たが、いきなり太い眉に八の字を寄せて、
「こりゃ空気が悪い。毒だ。少し開けよう」と上下の栓釘を抜き放って、真中の円鈕を握るや否や、正面の仏蘭西窓を、床を掃うごとく、一文字に開いた。室の中には、庭前に芽ぐむ芝生の緑と共に、広い春が吹き込んで来る。
「こうすると大変陽気になる。ああ好い心持だ。庭の芝がだいぶ色づいて来た」
宗近君は再び洋卓まで戻って、始めて腰を卸した。今さきがた謎の女が坐っていた椅子の上である。
「何をしているね」
「うん?」と云って鉛筆の進行を留めた甲野さんは
「どうだ。なかなか旨いだろう」と模様いっぱいになった紙片を、宗近君の方へ、洋卓の上を滑らせる。
「何だこりゃ。恐ろしいたくさん書いたね」
「もう一時間以上書いている」
「僕が来なければ晩まで書いているんだろう。くだらない」
甲野さんは何とも云わなかった。
「これが哲学と何か関係でもあるのかい」