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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血曼陀羅紙帳武士(ちまんだらしちょうぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 頁

青空文庫

殺されても仕方ない」

「それで安心。……妾アどうなることかと。……でも、芳志には芳志を。……失礼ながら旅用の足しに……」

と、お浦が、胴巻の口へ手を入れたのを、頼母は制し、

「他に頼みがござる」

「他に……」お浦は、意外に思ったか、首を傾げたが、何か思いあたったと見え、やがて、月光の中で、唇をゆがめ、酸味ある笑い方をしたかと思うと、「弱いところを握られた女へ、金の他に頼みといっては、さあ、ホッ、ホッ」

「誤解しては困る」

と、頼母は、少し周章てた。しかし厳粛の声で、「不躾けの依頼をするのではない」

「では……」

「賭場に神棚がありましたのう」

「ようご存知」

「ご神体は?」

「はい、天国とやらいう刀……」

「天国※(感嘆符疑問符、1-8-78) おお、やっぱり! ……お浦殿、その天国を拝見したいのじゃが」

「天国様を? ……異なお頼み。……何んで?」

「拙者は武士、武士は不断に、名刀を恋うるもの。天国は、天下の名器、至宝中の至宝、武士冥利、一度手に取って親しく」

「なるほどねえ、さようでございますか。……いえ、さようでございましょうとも、女の身の妾などにしてからが、江戸におりました頃、歌舞伎を見物、水の垂れそうに美しい、吉沢あやめの、若衆姿など眼に入れますと、一生に一度は、ああいう役者衆と、一つ座敷で、盃のやり取りしたいなどと。