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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《街はふるさと(まちはふるさと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 頁

青空文庫

二人は小さなバアの前を通りかかった。記代子は青木を取りおさえでもするように、腕に力をこめて、押した。

「ここで、休むのよ」

「え?」

そこは礼子の働いているバアだ。記代子に教えたはずはなかったが、知っている様子である。

「こゝに、ぼくの昔の奥さん、働いてるの、知ってるんだね」

記代子は睨んで、答えない。

「誰が教えたの?」

「休みましょうッたら」

記代子は身体ごと押した。

「ま、待ってくれ。ぼくの立場を考えてくれよ。修学旅行の女学生が色町をひやかすような気分で、ぼくをオモチャにしてくれるなよ」

「女学生じゃなくッてよ」

「すまん。しかし、な。別れた奥さんがお客さんにサービスするのを見るだけだって悲しいんだ。あれがふられた亭主だなんて、そんな哀れな顔を見たがっちゃ、いけないよ。それに、今日は、持合せがないのさ。別れた奥さんにたかって飲むほど、みじめな思いをしたくないんだ。それぐらいなら、泥棒がマシさ。なア、記代子さん。あんた、ぼくが泥棒なみに生きてきたこと、見て、知ってるじゃないか。しかし、別れた奥さんに、たかりたかアないんだよ」

記代子の目にあらわれたのは、軽蔑の色だけだった。