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みえざるてき

見えざる敵

海野 十三

線上閱讀海野 十三《見えざる敵(みえざるてき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,777 字 · 16 頁

青空文庫

こんな情けない話はなかった。

或るときは、市民の一人がショーウインドーに背をもたせかけて、大東新報を読みだした。彼は自分の失踪事件がデカデカとでてるのを知った。

「おい、ウルランドはここにいるんだ」

とその男の背中と思うあたりの硝子を破れんばかりに叩いたが、彼は背中に蚤がゴソゴソ動いたほども感じないで、やがて向うへいってしまった。

三日目に、手下のワーニャが乾分をつれてゾロゾロと通っていった。彼は必死になって、手をふり足を動かし、ゴリラのように喚いたが、それもやっぱり無駄に終った。

雑沓のなかの無人島に、彼はとりのこされているのだ。普通の無人島ならば、救いの船がとおりかかることもある。だが、この細長い巷の無人島は、完全に人間界を絶縁されてあった。

三度三度の食事だけは、妙な孔からチャンと差入れられた。それは子供が食べるほどの少量だったので、彼はいつもガツガツ喰った。

排泄作用が起ったときには、そこに差入れてある便器に果たした。はじめは雑沓する大通りを前にして、とてもそんな恥かしいことは出来なかったが、どうやらこっちから往来が見えても、外からこっちが見えないと分ってからは、すこし気が楽になった。