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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

線上閱讀山川 方夫《親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選(きく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 頁

青空文庫

ぼくはそこに横になって、視野いっぱいの青空をバックに、大きな波が打ちつけるたびに立つ飛沫の幕、その飛沫にかかる小さな虹の脚を、飽きもせずぼんやりとながめていた。こんなとき、一杯の熱いコーヒーでもあれば申し分ないんだがな、などと思いながら。

そのとき、ぼくに女の声が聞こえたのだ。

――バカなこといわないでよ。いったい、あなたに私のなにがわかるっていうの?

すこし喘ぐような、笑いを含んだような声音で、女は岩の近くを泳いでいるのだろう、声は岩をめぐるように動いて、喉にひっかかるような笑い声も聞こえた。

――なによ、うぬぼれるのもいい加減にして。私はなにも、思いつめたような気持ちであんなことしたんじゃないのよ。むしろ、その逆だわ。……いい? はっきりいっておくけど、あなたとのことは、ただの浮気よ。へんに誤解しないで。

ぼくは首をすくめ、身体を小さくした。どうやら、人かげのない沖で、人妻が夫以外の男に引導をわたしているところなのだ。それくらいのことはピンときたさ。でも、ぼくはぼくの存在に気づかれたくはなかった。

それこそ誤解はやめてほしい。べつにぼくは盗み聞きに興味をおぼえたわけじゃあない。