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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

線上閱讀山川 方夫《親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選(きく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 頁

青空文庫

でも、それもおれにはカンケイナイ。

夕方、局を出ると、彼の脚は、習慣のようにまっすぐに彼を駅に運んだ。そして、やはり習慣が、彼に夕刊を買わせた。下宿へと向う電車の中で、彼はその夕刊をひろげた。

突然、彼は呼吸をのんだ。社会面のある記事に目を吸われていた。昨夜の――正確には今朝の喫茶店で見たあの二人は、今朝、新宿のあるホテルで、心中をしてしまっていた。

吉田朝子(一七歳)は、短刀で胸を刺され、死亡していた。彼女の父のやっている雑貨店の店員、湯浅純(一六歳)は、同じ短刀で自分の胸、喉、腹を刺し、ホテルの女中に発見され病院へ向う途中で、やはり絶命していた。午前八時ごろの事件だった。

写真は小さかったが、たしかに、それはあの赤革の手帖で筆談をしていた二人だった。新聞は、原因は定時制高校を落第し、将来を悲観した純君に、朝子さんが同情しての覚悟の心中行とみられる、と報じていた。

くりかえしその記事を眺めながら、彼は、ふいに重く透明な波のような衝撃が、その彼を押しつつむように襲うのを感じていた。彼が、他愛のないいちゃつきの戯言と読んだあの筆談の文字は、じつは心中を決意した二人の純粋な愛情の言葉だった。