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おやはながめてかんがえている

親は眺めて考えている

金森 徳次郎

線上閱讀金森 徳次郎《親は眺めて考えている(おやはながめてかんがえている)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,403 字 · 29 頁

青空文庫

何とかして、ここに入れて貰いたいものだと願書を出したが、情ないことに入学不許可になった。

その前から親の職業が無職であり、またその人は、新聞によれば乱臣賊子なんだから、入学はむつかしいぞ、と家の中で愚父愚母が話しあっていたが、この結果になって二人ともこっくりした。無論内面の事情を批判したのでもなく、それを不当と思うのでもなく、一種の偶然を容認しただけである。ところが妻は中々あきらめ切れない。他の二三の師範学校の附属へ願書を出して努力したが、どこも拒否された。止むを得んとあきらめて、親の因果が子に報うの結果になったことを心の中で陳謝するのみであった。

しかし有り難いことに、普通の義務教育の小学校は、決して乱臣賊子の家族をも拒否しないのである。日本に生れて幸だと思った。それで順当に進むかと思っていると、その中戦争は苛烈になった。学童疎開がやかましくなり、博雄の学校も長野県の田沢へ疎開することになった。時は昭和二十年四月頃である。三月爆撃のあと人心頗る不安であったからである。博雄は当時八歳であって、親の手もとを全く離れたことはない。浪人の子であるから、殆んど旅行したこともない。