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うたせてやらぬかたきうち
討たせてやらぬ敵討
長谷川 伸
線上閱讀長谷川 伸《討たせてやらぬ敵討(うたせてやらぬかたきうち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,752 字 · 22 頁
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寛永十六年四月十六日の早朝。陸奥国会津四十万石加藤式部少輔明成の家士、弓削田宮内は若松城の南の方で、突然起った轟音にすわと、押っ取り刀で小屋の外へ飛び出した。この日宮内は頭痛がひどいので、小屋に引き籠って養生していたのである。
宮内は骨細い生れつきで、襟首のあたりは女かと思うばかり、和かい線をしていた。見るからに弱々しいのは姿ばかりではなく、実際に非力であった。島原の切支丹退治があって、血腥い噂が伝わったのは昨年のことである。大坂落城以来二十年余の今日では、天下泰平を誰しも望んではいたが、油断の出来る時節にはなっていなかった、それだけに一朝事ある場合に、優しい姿の宮内では、とても役にたつまいと軽しめられていた、宮内はそうした批評が、自分に下されていることを、勿論覚っていた。しかし、武芸に長所を持たぬ上に、非力である自分の体を、どうすることも出来なかった。
押っ取り刀を宮内は、腰にさしながら小屋の外で、天地に轟いた、今の音が、起ったらしく思われる南山の空を仰いだ、と直ぐ眼についたのは、脅かされて群れ乱れた夥しい禽であった、緑につつまれた山も野もすてて、怖れ怯えて青空に彼等は狂っていた。