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ちゅうもんちょう

註文帳

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《註文帳(ちゅうもんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,770 字 · 67 頁

青空文庫

ありそうな、乳房も見える懐から、まともに五助に向けた蒼ざめた掌に、毒蛇の鱗の輝くような一挺の剃刀を挟んでいて、

「これでしょう、」

五助はがッと耳が鳴た、頭に響く声も幽に、山あり川あり野の末に、糸より細く聞ゆるごとく、

「不浄除けの別火だとさ、ほほほほほ、」

わずかに解いた唇に、艶々と鉄漿を含んでいる、幻はかえって目前。

「わッ」というと真俯向、五助は人心地あることか。

「横町に一ツずつある芝の海さ、見や、長屋の中を突通しに廓が見えるぜ。」

とこの際戸外を暢気なもの。

「や! 雪だ、雪だ。」と呼わったが、どやどやとして、学生あり、大へべれけ、雪の進軍氷を踏んで、と哄とばかりになだれて通る。

雪の門

十四

宵に一旦ちらちらと降ったのは、垣の結目、板戸の端、廂、往来の人の頬、鬢の毛、帽子の鍔などに、さらさらと音ずれたが、やがて声はせず、さるものの降るとも見えないで、木の梢も、屋の棟も、敷石も、溝板も、何よりはじまるともなしに白くなって、煙草屋の店の灯、おでんの行燈、車夫の提灯、いやしくもあかりのあるものに、一しきり一しきり、綿のちぎれが群って、真白な灯取虫がばたばた羽をあてる風情であった。