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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
線上閱讀三木 清《読書遍歴(どくしょへんれき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 頁
私はそこに何か気取りに似たものを感じた。しかし老齢になってからもなお気取ることができたところにトルストイの偉さがあるのかも知れない。ルソオの『懺悔録』とか、アウグスティヌスの『告白録』とか、マルクス・アウレリウスの『省察録』とか、そういった種類の、あるいは名前の本を私は好んで読んだ。哲学者ではショーペンハウエルとかニーチェとかの生の哲学が流行し、私もその影響をこうむった。和辻哲郎氏の『ニーチェ研究』とか『ゼーレン・キェルケゴール』とかは、当時の雰囲気を現わしている書物である。文学においても私はロシア文学に多く興味をもつようになり、ことにチェーホフの作品を愛読し『桜の園』のごときは幾度も繰り返して繙いたものである。青年の間では華巌の滝で自殺した藤村操が始終話題にのぼるという時代であったのである。私なども本を読みながら本に対して全く懐疑的になり、自分の持っていた本を売り払ってしまうというようなことが一度ならずあった。
今私が直接に経験してきた限り当時の日本の精神界を回顧してみると、まず冒険的で積極的な時代があり、その時には学生の政治的関心も一般に強く、雄弁術などの流行を見た――この時代を私は中学の時にいくらか経験した――が、次にその反動として内省的で懐疑的な時期が現われ、そしてそうした空気の中から「教養」