輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《貧しき人々の群(まずしきひとびとのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 頁
或る日の午後、私共は茶の間の縁側の傍に坐って、胡桃(くるみ)を挽いていた。すると耕地の方から、グルリと廻って庭木戸の中へノッソリ入って来た男がある。びっくりして見ると、善馬鹿だ。
私は何だか薄気味悪くなって、少し奥の方へいざり込んだ。奥にいた祖母やその他の者も出て来て、半ば気味悪く半ばめずらしそうに、だまって庭に立っている善を見ていると、暫くして彼は低い声でかなりはっきりと、
「酒えくんろー」
と云った。
下女は直ぐ立って行って、薄く酒の香いのする水を、破(か)けた飯茶碗に入れて来た。そして遠くの方から手をのばして、
「ホラ、ここさ置くぞ」
と縁側の端に置いてやった。
善馬鹿は下女の手が引っ込むか引っ込まないかに、引ったくるようにして、茶碗をとった。そして、フーフー鼻息を立てて、喉仏をゴクゴクいわせながら一滴もあまさず飲んだ後を、すっかり舐め廻した。
空っぽの茶碗を持ったままいつまでもそこに立っている。下女は穢いから早く逐い出しましょうと云ったけれども祖母は、狂人や何かにひどくすると、あとできっと「あた(仇)」をするものだからと云って放って置かせた。
私は久し振りで善馬鹿の顔をツクヅクと眺めた。