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みがわりのはなよめ

身代りの花嫁

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《身代りの花嫁(みがわりのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,685 字 · 22 頁

青空文庫

花嫁の自動車が衝突した

花嫁の自動車が衝突した

「花嫁の自動車は?」

「まだ来ない、どうしたのだろう、急行の発車まで、五分しかないじゃないか」

「迎えに行って見ましょうか」

東京駅の待合室に集った人達は次第に募る不安に、入口からまっ暗な外を眺めたり、売店や三等待合室を覗いたりしました。

「歩廊に居るんじゃありませんか」

「もう乗り込んだのかも知れませんね」

そんな事を言いながら改札口へ行った人達は、急行はたってしまって、狐につままれたように、歩廊から降りて来る別の一隊と顔を合わせたのでした。

「新婚の夫婦は汽車へは乗りませんよ」

「新橋からたったんじゃありませんか」

「そんな筈はない。親許の関谷さんや、媒酌の方もこの駅に見えた位だから」

「それにしてはおかしいぜ」

こんな評議のまっ最中、乗車口に高級車を乗りつけて、その中から十三、四の可愛らしい少女が疾風のように飛んで来ました。

「あッ、勇美子さん、どうなすったの?」

花嫁の後見人で親許になって居る関谷文三郎夫人が訊きました。

「詩子姉さんが」

「詩子さんがどうした」

関谷文三郎は人波を掻きわけて来ました。中年者の勤人らしい堅実な男、巨万の富を遺された富める孤児の詩子を、四、五年この方自分の娘のように世話をして来た人物です。