輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ぐんこくかようしゅう
軍国歌謡集
山川 方夫
線上閱讀山川 方夫《軍国歌謡集(ぐんこくかようしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,655 字 · 80 頁
娘は人ごみにまぎれた。
――その夜、私はまっすぐ下北沢の駅に下りて、大チャンの下宿への街燈のまばらな薄暗い道を歩きながら、声に出して、もし愛があるのならば、もし愛があるのならば、……と二三度呟いたのを憶えている。イメージの中に、小柄な首の細いあの娘の、白い裸の肌が動いていた。もし、愛があるのならば。……だが私は、いや、自分の求めているのは女体だけだ。あの娘の体だけだ、と思った。しかし、私は不安に駆られたように独白した。もし、もし本当に愛があるのならば。……
私は、そのときの自分の、芝田晴子という名の娘を思うたびに胸に揉みこまれた、奇妙な痛みに似た閃くような疼きを、いまだに忘れてはいない。資格のないかなしみのように、それは私の胸に奥ふかくひろがり、私の足を止めさせた。いや、やめよう、愛についてなんか考えるのをやめよう、と私は低くいった。私は、その足でふたたび駅の方角に引き返した。その日もらった家賃から抜いてきた一枚の紙幣で、私は酒を買おうと思ったのだ。その夜は雨になった。
私が、あの歌声の主の娘――芝田晴子から手紙をもらったのは、それから三四日たってである。