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おうまのとき
逢魔の刻
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《逢魔の刻(おうまのとき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,898 字 · 4 頁
そして茶店に飛びこんで、酒を煽った。
「馬鹿なことを考えたもんでさあ。ねえ旦那、浅間の噴火口に飛びこむなんてのも、あんなものかも知れねえ。」そして彼はもうけろりとして、晴々とした哄笑で狭い茶店を満した。
だが、その「何になるんだ。」という奴が、いつまた彼の前にひょっこり姿を現わさないとも限らない。其奴は、「考える葦」たる吾々人間につきものだから。
彼がその時恐れた、野の花も、叢の虫も、牧場の牛も、浅間の煙も、日の光も、「何になるんだ。」なんてことを決して考えはしない。夢にも思ってはみないのだ。こんなことをしてそれから……そしてその先は……そして終局は、結局は、何になるんだ、とそんな無駄を考えて時間をつぶしはしない。もっと胎が据ってるんだ。
その時茶店の中で、私は木挽に右のことを反問するのを止めて、ただ微笑を以て彼の話に答えた。もし私がその反問をしたら、彼はどういう顔付をしただろうか。一層威勢よくなっただろうか、或は全くしょげ返っただろうか、それが私には疑問である。