輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
うん
運
線上閱讀芥川 竜之介《運(うん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,913 字 · 14 頁
ただ、ふり離そうとする拍子に、手が向うの口髭にさわりました。いやはや、とんだ時が、満願の夜に当ったものでございます。
「その上、相手は、名を訊かれても、名を申しませぬ。所を訊かれても、所を申しませぬ。ただ、云う事を聞けと云うばかりで、坂下の路を北へ北へ、抱きすくめたまま、引きずるようにして、つれて行きます。泣こうにも、喚こうにも、まるで人通りのない時分なのだから、仕方がございませぬ。」
「ははあ、それから。」
「それから、とうとう八坂寺の塔の中へ、つれこまれて、その晩はそこですごしたそうでございます。――いや、その辺の事なら、何も年よりの手前などが、わざわざ申し上げるまでもございますまい。」
翁は、また眦に皺をよせて、笑った。往来の影は、いよいよ長くなったらしい。吹くともなく渡る風のせいであろう、そこここに散っている桜の花も、いつの間にかこっちへ吹きよせられて、今では、雨落ちの石の間に、点々と白い色をこぼしている。
「冗談云っちゃいけない。」
青侍は、思い出したように、頤のひげを抜き抜き、こう云った。
「それで、もうおしまいかい。」
「それだけなら、何もわざわざお話し申すがものはございませぬ。