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どうとくのかんねん

道徳の観念

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁

青空文庫

この関係はそのまま道徳にもあて嵌まる。道徳という領域の内容をなす夫々の道徳現象は、領域的には皆道徳的だ、処が価値的にはその領域に最も相応わしいものだけが最も道徳的なのだ。一般に価値は各個現象が全体現象に対して持つ比例の区別を、抽象して強調誇張する処から発生する。道徳価値の対立は道徳領域の内容たる全道徳現象の単なる比例関係から発生するのだ。

善価値(悪という反価値の対立物としての)にだけ道徳を認めようという常識の権利とその失権との消息は右によって略々明らかになったと思うが、併し道徳を価値的に道徳的であることに限定したり又は専らそこを強調しなければ気が済まなかったりするのには、他に一つの動機が伏在しているのである。云う意味は、道徳なるものを人間の或る特別な独立な属性と考えていると云うのだ。つまり人間性には善の性質と悪の性質とがあって、善の性質を有った人間が、善人であり道徳的人物であり、悪の性質を持ったものが悪人で不道徳漢だというわけなのだ。或いは人性初めから善であるとか又は初めから悪であるとかいう穿鑿も亦、ここにぞくする考え方なのである。これによると道徳とは結局人間性の一性質に過ぎぬわけで、人でなしは往々にしてこの大事な人間性を欠くが故に人非人だということになる。