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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

あのカバンを届けさせず、自分でまっすぐに持って帰った。そこにも須美子の心の疼きがうらづけられている。不仕合わせな須美子の感情の動きにくらべると、そのような痛みにおかれていない自分の心が、大まかにしか働らかないのを、伸子は自分の卑しさを発見したに近い感じで自覚するのだった。

つや子は、しばらくしてまた、

「ねえ、お姉さま」

とよびかけた。

「お兄様たち、ロンドンでいまごろ何していると思う?……動坂ではね、このひと、お兄様と寝ていたのよ。お兄さま、いつもおそくかえって来てねるでしょう、だからこのひと、先へねるとき、お兄様の枕をだいてねることにしていたの。いつだったか、一所懸命枕だいてねていたつもりだったら、目がさめたとき、ほんとにあきれちゃった。枕だと思ってたの、お兄様の脚だったんですもの」

「まあ、いやだ!」

風呂ぎらいだった和一郎の毛脛を考えて、伸子は笑い出した。

「さかさになったのはどっちなのよ」

「このひと――」

少女のつや子が、このごろは多くひとりぼっちのこころもちで暮していることが、たまのこういう会話で伸子に察しられるのだった。末娘のつや子が両親に愛されていないと云ってしまえば、それは、長女の伸子がちっとも愛されていないというのと同様に、真実ではなかった。