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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

十三

いた。

蒲原のかりた室は、ひどく脂じみていて床の一部は腐っていた。

「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)には、むずかしい規則があるんだそうで、僕はここで借室人ではないんです、泊り客というわけなんです」

「なるほどね。お客をとめるにしちゃちょっとひどすぎるけれど、絵をかく人なんだから、ホテルになんぞいるよりずっといいですよ。ホテルじゃ画なんか描けっこないさ。雰囲気がないんだもの」

「そうなんです」

蒲原は、伸子たちのところを出た動機が、素子にも自然に理解されていることを満足そうにうなずいた。

「おまけに、僕自身、少々、まとまりよく出来すぎているんです。――芸術家として、マイナスだと思うけれど、生れつきかなあ」

「ふ、ふ」

素子が好意とからかいとを交ぜて若者を見る、年かさの女の眼で蒲原を見た。

「それできみが芸術家きどりだったりしたら、一日でわれわれのところはおはらいばこさね」

蒲原は、意識してか意識しないでか、伸子と素子と、どちらに対しても、中性的な存在として暮したのだった。

補助ベッドがとりはらわれて、伸子たちの部屋は久しぶりにひろびろした。何もなくなった床のそのところに窓からの朝日がさしこんでいる。