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のわき
野分
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,401 字 · 42 頁
五
五
又三郎は後ろを見た、そっちにも三四人いた、つまり前後を塞がれたわけである。彼等はみんな面を包み、姿勢にものものしい意気ごみをみせていた。
「黙ってついて来ていただきたい」前に立った三人の中からこう云った者がある、「……声をだしたり逃げたりするとお為になりません、どうかおとなしく来て下さい」
「私は楢岡又三郎という者だが」
「黙ってと申上げたでしょう」その男はのしかかるような調子で云った、「……お手間はとらせません、そこまで来て頂けばいいのです、まいりましょう」
彼等は巧みにすり寄って又三郎の左右をきびしく固めた。これは暗殺者だ、彼はそう直感した。もちろん世子選定にからんだもので、又三郎の存在が邪魔になる一派のさしがねに違いない、なんというばかげたはなしだ、――本能的な恐怖はむろんあった、けれども彼はそれより強く罵り嗤ってやりたい欲望を感じた。彼は戸沢家の世子になりたいと思わないばかりでなく、きょうあすにも大小を棄てて屋敷を出てゆく積りでいる、それをうちあけたら意気ごんでいる彼等がどんな顔をするか、そして暗殺者を出すところまで切迫した重臣たちのあいだに、どんな悲喜劇が起こるだろうか、それは考えるだけでもひと笑いの値打はありそうなことだ。