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のわき

野分

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,401 字 · 42 頁

青空文庫

「そうしよう、こんどは知った者にも会わないような、どこか遠いところへな……」

前の日から三日めの、風の吹く午後だった。道灌山のほうから馬を駆って来た一人の武士が、植伴の前へ馬をつなぐと、片手に鞭を持ったまま大股にはいって来た。塗笠を冠っているので人品はわからないが、身装や態度から、然るべき、身分の人だということは明らかだった。植伴は大名屋敷へも出入りがあるので、決して驚くほどの出来ごとではなかったが、主の伴吉がてばやく着物を直して出迎えた。

「この家に藤七と申す老人がいるか」その武士は笠を冠ったままこう訊いた、「……お紋という孫娘のいる、本所から移って来た老人だ」

「へえ藤七はおりました、去年の冬から此処へ来ておりましたが、一昨日その孫といっしょに出ましてございます」

「出たというと、用事ででも……」

「いいえ暇を取りましたので」

「ああ」武士は呻くような声をあげた、「……それで、何処へいったかゆきさきはわかっているか」

「さようでございます、目黒とか、荏原とか申しておりましたが、はっきりしたことはおちついたら知らせると云うばかりで、とつぜんでもあり私どもでもなにがなにやら……」