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のわき
野分
線上閱讀夏目 漱石《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 頁
一人坊っちの葉がまた揺れる。今度は右へ左へ二三度首を振る。その振りがようやく収ったと思う頃、颯と音がして、病葉はぽたりと落ちた。
「落ちた。落ちた」と高柳君はさも落ちたらしく云った。
やがて三尺の押入を開けて茶色の中折を取り出す。門口へ出て空を仰ぐと、行く秋を重いものが上から囲んでいる。
「御婆さん、御婆さん」
はいと婆さんが雑巾を刺す手をやめて出て来る。
「傘をとって下さい。わたしの室の椽側にある」
降れば傘をさすまでも歩く考である。どこと云う目的もないがただ歩くつもりなのである。電車の走るのは電車が走るのだが、なぜ走るのだかは電車にもわかるまい。高柳君は自分があるくだけは承知している。しかしなぜあるくのだかは電車のごとく無意識である。用もなく、あてもなく、またあるきたくもないものを無理にあるかせるのは残酷である。残酷があるかせるのだから敵は取れない。敵が取りたければ、残酷を製造した発頭人に向うよりほかに仕方がない。残酷を製造した発頭人は世間である。高柳君はひとり敵の中をあるいている。いくら、あるいてもやっぱり一人坊っちである。
ぽつりぽつりと折々降ってくる。