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のわき

野分

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 頁

青空文庫

風にめぐる落葉と攫われて行くかんな屑とは一種の気狂である。ただ死したるものの気狂である。高柳君は死と気狂とを自然界に点綴した時、瘠せた両肩を聳やかして、またごほんと云ううつろな咳を一つした。

高柳君はこの瞬間に中野君からつらまえられたのである。ふと気がついて見ると世は太平である。空は朗らかである。美しい着物をきた人が続々行く。相手は薄羅紗の外套に恰好のいい姿を包んで、顋の下に真珠の留針を輝かしている。――高柳君は相手の姿を見守ったなり黙っていた。

「どこへ行く」と青年は再び問うた。

「今図書館へ行った帰りだ」と相手はようやく答えた。

「また地理学教授法じゃないか。ハハハハ。何だか不景気な顔をしているね。どうかしたかい」

「近頃は喜劇の面をどこかへ遺失してしまった」

「また新橋の先まで探がしに行って、拳突を喰ったんじゃないか。つまらない」

「新橋どころか、世界中探がしてあるいても落ちていそうもない。もう、御やめだ」

「何を」

「何でも御やめだ」

「万事御やめか。当分御やめがよかろう。万事御やめにして僕といっしょに来たまえ」

「どこへ」

「今日はそこに慈善音楽会があるんで、切符を二枚買わされたんだが、ほかに誰も行き手がないから、ちょうどいい。