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つげびと

野菊の墓

伊藤 左千夫

線上閱讀伊藤 左千夫《野菊の墓(つげびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,955 字 · 71 頁

青空文庫

源四郎はなお屋敷のすみずみの木立ちのなか垣根のもとから、朽ち葉やほこりのたぐいをはきだしては、物置きのまえなる栗の木のもとでそれを燃やしている。雨になったのでいっそうせいてやってるようすである。もとより湿けのある朽ち葉に、小雨ながら降ってるのだから、火足はすこしも立たない。ただプツプツとけむるばかり、煙は茅屋のまわりにただようている。源四郎はそれにもかかわらず、どしどしといやがうえにごみをのせかける。火はときどき思いだしたように、パチパチと燃えてはすぐ消えてしまう。朽ち葉のくさみを持った煙はいよいよ立ち迷うのである。源四郎は二十二、三の色黒い丸顔な男だ。豆しぼりの手ぬぐいをほおかむりにして、歌もうたわずただ黙もく掃除している。

源四郎のしゅうとごは六十以上と見える。背高く顔の長いやさしそうな老人だ。いま奥の間の、一枚開いた障子のこかげに、机の上にそろばんをおいて、帳面を見ながら、パチパチと玉をはじいてる。お台屋のかたでは、源四郎の細君お政とまま母と若いやとい女との三人が、なにかまじめに話をしながら、まま母ははすの皮をはぎ、お政と女はつと豆腐をこしらえてる。