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つげびと

野菊の墓

伊藤 左千夫

線上閱讀伊藤 左千夫《野菊の墓(つげびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,955 字 · 71 頁

青空文庫

お政はほとんど胸中が転倒している。まずなにごとよりもさきに、お政が胸に浮かぶのは、気違いの母がどんなふうにしてなくなったかという点である。

もしや野原か往来などで、行き倒れにでもなりやせまいか、人の知らぬまに死んでいたのではないかしら、それともすこしは早くようすがわかって家のものの世話を受けてなくなったのか、いろいろな想像が一時に胸にわきかえる。ひさしいあいだの気違いであるから、家の人たちとてきっと満足には世話もしてくれなかったろう。

とかくにこうひがんだ考えばかり思いだされ、顔はほてり、手足はふるえ、お政はややとりのぼせの気味で、使いのものに始終のことを問いつめるのである。告げ人というものにたいしてのあしらいかたには、通例の習慣がある。お政はそれらのことにも気がつかずに、たすきを手にして立ったまま話を聞いてる。使いのふたりがかわりがわりに話すところをまとめると、こうである。

「べつに病気というほどにも見えなかったけれど、この月はじまりのころから、たいへんおとなしくなって、家のもののいうことをよく聞きわけ、ほとんど外へでなかった。家のひとたちのあてがうものをこころよく食い飲みして、なんのこともなく昨夜まで過ごしてきたところ、けさは何時になっても起きないから、はじめて不審をおこし、いろいろたずねてみるとようす