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きんろう

金狼

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《金狼(きんろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,438 字 · 179 頁

青空文庫

なま温い水だった。

広間には、むやみに人がつまっていて、みな申し合せたようにジョッキをひかえていた。大きな扇風器が、いらだたしく天井で羽搏いていた。

葵がやってきた。富士絹のブルウゼに薄羅紗のスカートをつけ……まじめな百貨店の売子のように、さっぱりと地味ないでたちだった。駆けつけるように寄ってきて、久我のとなりへ坐ると、苦しそうに息をきった。

「はあ、はあ、いってますね、どうしたの」

ふ、ふ、と笑うばかりで、返事しなかった。

「お腹は明けてあるでしょうね」

子供のように、いくどもうなずいた。

広間の入口のところで、西貝と乾がうろうろしている。葵がそのほうへ両手をあげて、それを手旗のように振った。

二人は、遠くから、やあ、やあ、いいながら近づいてきた。乾は黒い上衣を着、その下へ固苦しく白チョッキをつけていた。扇子で手首へ風を入れながら、

「苛酷なる司直の手より脱免し、四士ここに無事再会。こうして一杯のめるというのは、まずまず祝着のいたり。(と、べらべら喋ってから、葵のほうへ短かい顎をつきだし)……ねえ、葵嬢。なにかと、ずいぶんうるさかったでしょう。いや、お察ししますよ。