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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,957 字 · 31 頁
「いいか。死んでから、何日経ったと思う――。」
「お願いするんだよ。竜手様へお願いするんだよ。なぜ願わないか。」
おこうは、惣平次へ武者振りついて、異常な力で、押入れのほうへ引きずった。
二人の影が、もつれて、天井に、壁に、大きく拡がって、揺れた。
老いた人々の、痩脛も、肋骨も、露わにしての抗争は、見ている藤吉に、地獄――という言葉を想わせた。
「惣平! 出せ! 出して、願うんだ。」
思わず出た、藤吉の声だった。
六
偶然ではあろう。竜手様という、竜の手が、海蛇の乾物か、とにかく、伝説的な品ものを手に入れて、それに、いたずら半分の試しごころから、百両の金を祈った翌日、ちょっとした自分の不注意で、庄太郎があんなことになったのは、つまり、そういう巡り合わせだったのだろう。
その逸見家の香奠が、百両だったばっかりに、ちょうど、この願いが届くために、百両のかたに庄太郎の生命を奪られたようなことになって、そこに、言いようのない怪異が生じるものの、所詮は、偶然――すべてが、再び、そういう廻りあわせだったのだ、と、藤吉は、信じたかった。
不可思議――どうしても、人間の力で説明がつかないなどということは、この人間の世の中に、あり得ない。