輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,598 字 · 26 頁

青空文庫

抱きついて首を掻いた大出刃、血泥に染れた衣裳、竹の先に懸っていた笊目籠などは、纏めて馬場わきの溝へ押し込んであった。

聞いてみればまんざら無理からぬ心中だが、凶事は凶事、大罪人に用いる上柄流本繩の秘伝、小刀か笄で親指の関節に切れ目を入れ、両の親指の背を合わせて切れ目へ糸を廻わして三段に巻いて結ぶという、これが熊谷家口述の紫繩。なぜ紫繩というかと言えば、紫という字は割って読めば此糸、意は何かそこらにあり合わせの「此の糸」でも痛みに食い入るから本繩としての役目は結構たりるというところから来ているとの説もあるし、血が糸に滲んでむらさき色を呈するからかく称するとも言われている。

紫繩の弥吉、憮然として前後を固める合点長屋の親分乾児立去ろうとするそのあとに、鬼火を利かした小道具、燈芯やら油を含んだ綿やらが、普請場の壁下に風に吹かれて散らかっていた。

歩き出した弥吉、振り向いて、血を吐くように叫んだ。

「お糸さまあっ!」

おりきの家の格子戸が勢よく開いて、何も知らずに、永久に来ぬ可愛い男を待ち侘びている娘お糸、通りの上下の闇黒を透かして、

「だって、ほほほ、いけ好かない婆や、今呼ぶ声がしたんだもの――あら、嫌だねえ、空耳かしら。