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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁

青空文庫

賢吉君は、口笛をふきながら足ばやに歩いていましたが、森のまんなかほどまでくると、じぶんの足音のほかに、もうひとつべつの足音が聞こえるような気がしました。おやっとおもって、口笛をやめて、耳をすましながら歩いていますと、たしかに、べつの足音がしています。じぶんの足音が、森にこだまして、二じゅうに聞こえるのではありません。もうひとつの足音はパタパタと、ひじょうにはやく、走っているように聞こえるのです。

賢吉君は、ためしに立ちどまってみましたが、それでもパタパタという足音はつづいています。

やっぱり、だれかが、うしろから走ってくるのです。

ふりむくと、たちならぶ石どうろうのあいだから、黒いものがパッとこちらへとびだしてくるのが見えました。おとなの人です。悪ものかもしれません。賢吉君をおっかけてきたのかもしれません。そして、お金をとろうとするのではないでしょうか。

しかし、賢吉君はにげだしもしないで、じっと、もとのところに立っていました。

男は、たちまちそのそばに近づいて、

「おい、きみ、たのみがある。だいじなたのみがある。きいてくれ。」

と、息せききって、いうのでした。