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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁

青空文庫

かたむいた床には、二十年のゴミがたまり、そこから人間の胸までもあるような、長いコンブのような海草が、いっぱいはえていて、歩くこともできないほどです。

そこは上甲板の下で、貴重品室などのあるところですから、潜水夫たちは、それをさがすために、おりてきたのですが、壁は、すっかり貝がらにおおわれていて、どこにドアがあるかもわからないほどで、とても、金塊のありかをみつけだす見こみはありません。

船室の床も、三十度かたむいているのですから、ナマリのくつで歩くたびに、ずるずるとすべります。しかし、陸上とちがって、すべっても、ころぶようなことはありません。水の中でからだが軽くなっているからです。

足がすべると、海草の根に十センチもたまっているゴミが、むらむらと目の前にわきあがり、むこうが、見えなくなってしまいます。また、海草のあいだに、かくれていたさかなが、むれをなして逃げだします。それが水中電灯の光の中をとおると、ウロコが金色、銀色にかがやいて、じつにうつくしいのです。

潜水夫は、手くびまではゴムの潜水服ですが、ゆびには軍手をはめていました。そのほうが仕事がしやすいからです。